画家と語る5

200341

  フォークナーとヘミングウェイをマティスとピカソに比べてみる。静かに思考する種類の人達、アクティブに制作する人達。農民作家といわれて喜んだというフォークナーはヘミングウェイと同時代人。二人ともノーベル賞受賞。今、高松(次郎)がいたら、二人で又ずいぶん良く話しただろうな~。

  ほぼ同じサイズの絵を2枚描く。明るい気持ちの絵を描くと、その反対を描きたい。明と暗。明るいは同じ気分でも色彩のあるものとないもの。1枚描くとそこからもう1枚のアイディア。

  ここ(バリ島ネガリ村)に来た頃はカンバスをどうしても縦にして描けなくて、横長の絵ばかり描いていた。今は垂直に囚われていて横の絵がなかなか描けない。何枚も何枚もあーやったりこーやったりしてやっと納得のいく作品が出来る。それをやっているうちにまた、違うテーマが頭に浮かぶ。この繰り返し、「絵を描くのは楽しいね~」と。

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  2ヶ月じゃ足りない、もちろん2ヶ月で出来るんだけど、本当はしばらく置いて、もう一度見て仕上げたい。やはり描くだけ良くなる。

  3部作―中心の「人物」はほぼ決まった。右の「葉」の部分は深い感じにしたい。左に左に「空と海」の青に広がっていく。 タッチが大事。日本の習字用の筆は線のリズムを描くのにとても良い。これは輪郭ではないんだ、これがリズムになって全体が響き合う。

  画家は「歴史を信じる」とよく言う。ピカソやマティスと同時代の絵描きでも、その頃は非常にもてはやされていても、ほんの50年もするともう消えてしまう。例えばビュッフェ、その頃はすごく売れていた―今はやっと名前が残っている。もうすっかり忘れられている人もある。

  戦争という、人間のエゴによって他の国の人々の命や心が踏みにじられている。このアメリカの暴力にイラク人のみならずアラブ人達、イスラム圏の人達が国を超えて反米運動をやっている。過去の歴史を踏まえればこの戦争という行いがどんなに野蛮な事かは、それこそ歴史が証明している。世界中でどれだけのブッシュの人形が焼かれたことか。力のない一般の人々は人形を敵に見立てるしか方法がない。金の力はこんなに大きい。インドネシアのテレビを見る。戦争の犠牲者の数を「JIWA」と数える。何人という表現なら「ORANG()」でいい。それだけ人の命を「魂」や「霊」という意味の「JIWA」という言葉で表現する国、インドネシア。

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  3部作を間隔をもっとあけて、本来のサイズに置いてみる。他の2点を裏返して見る。いろいろと試してみてまた、3枚を並べる。こうしていろいろな見方をしてそれぞれを仕上げる。

  今日はサラスワティの日、チョクさんの家に行くことにしていたが、風邪をひいて調子がもう一つ。取り止め。

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  秩序と統一。3部作を見ながら―右の黄色の太陽をコンパスで一回り大きくする。色の秩序、大きさのバランス、全体のコンポジションとしてのバランス。

  そこに描く―表現するというんじゃなくて、そこに現れる。カンバスの裏からそこに現れる。

  スポーツの選手というのは、とても良い顔しているのね。勝つか負けるかの世界だから。優勝した時のインタビューとかでとても良いこと言うよ。哲学的な事とか。個人競技の選手が特にそうね、特にゴルフの選手。一流のものには「美がある」と。一人一人が持っている感覚を肝心な時に最大限に使う、それが「美」。